その他の個人調査 妄想依頼人!

東京探偵社AI

浮気調査探偵ブログ

妄想依頼人!

目覚めると、正午をまわっていた。一日中開けられることの無いカーテンの隙間から、1番高い位置からの日光が少しだけ差し込んでいる。薄暗く、妙に浮世離れした空間。この明るさの中で一服するのがとても好きなのだ。渋い探偵の気分に浸れる。

いつもなら午前からの出勤なのだが、昨日の調査が深夜にまで及んだため、今日はちょっとばかり遅めの出勤。起き抜けには水1杯しか喉を通らないから、起きてから家を出るまでが実に早く済む。起きて、歯を磨いて、水飲んで、渋い探偵やって、いつものカーキのジャケットを羽織って家を出るだけ。ジャケットは探偵っぽいから好んで着ている。 この時間帯の埼京線は最強ではない。

タイミングが良ければ座れるほど、スペースという名のダメージを負っている。事務所までは2駅。仕事モードに切り替えるには少し距離が近すぎる気がする。

事務所には大抵毎日依頼者が相談に訪れる。個人経営の探偵事務所は探偵自身が相談を兼任することもあるようだが、今の事務所は相談員が専門している。故に我々探偵が依頼者と直接顔を合わせることはほとんどない。 事務所の入るビルに着く。オフィスのある6階に行くためにエレベータを待っていると、降りてくる。まるでアニメからそのまま飛び出してきたかのような、青髪に色白の少女。その眼はどこか悲愴に満ちていて、隙がなかった。 「この人は依頼者か?」と直観した。こういう眼をしている人は大抵深い闇を抱えている のだ。経験というか、主観だが。そしてこの直観は的中していた。

出勤して相談員に事の首尾を確かめるまでもなかった。事務所は「その」話題で持ち切りであったからだ。内容を訊いてみて驚愕した。

  • 依頼者はやはりあの青髪の少女
  • アニメの世界?から飛び出してきたらしい
  • 母親の行方調査の依頼 ・母親もアニメの世界の住人?らしい
  • 母親とアニメの世界で喧嘩してしまう
  • 母親は怒ってこちらの世界に逃げ、行方がわからない
  • こちらの世界のことはなぜかよく知っている
  • アニメの世界で居ても立っても居られなくなった自分もこちらに来、探偵に調査を依頼
  • 日本円は所持している

まとめるとこんな内容だったらしい。

もちろん対応した相談員含め、半信半疑なのは言うまでもなかった。半信半疑どころか1信9疑くらいのものだろう。というか、「こころの病」がまずもって考えられるところである。普通はこういった場合「お断り」という形になってしまう案件なのだ。事前の電話相談にて大方の依頼内容を訊いておくのだが、今回は珍しく飛び込みの相談だったのだ。それもそうだ。こちらの世界に抜けて真っ先にたまたま見つけた探偵事務所に飛び込んだのだから。 「受ける」という判断になった。アニメの世界を信じた訳ではない。しかしよく考えてみれば、その母親がアニメの世界の住人だろうが、こちらの世界にいるならば、捜索することは可能なのではないか。異世界から来たとはいえ、姿形くらい目視できよう。

それは自称異世界住人の依頼者が証明している。異世界云々はとりあえず置いておいても、この案件は難儀しそうである。

  • 母親も青髪でこちらでは目立つらしい。
  • 母親が飛び出してすぐに追ってきたからそう遠くには行っていない
  • 母親はこちらの通貨を持っていないから、徒歩でしか移動できない

これくらいの情報しかないのだ。行方調査は初動も要である。偶然にも本日の調査予定はない。自分が行くことになるだろう。決まったからには気合を入れて臨まなければ。相談員は依頼者の所持しているという携帯に電話し、依頼を受ける旨を伝える。本来ならばこの辺りの契約手順もおかしいのだが、なぜか誰もおかしいと思わなかった。

こうして悲愴を纏わせた青髪少女と2人での行方調査が始まったのだ。この段階では異世界がどうとかなんてことは頭の片隅に残っているだけで、「青髪の中年女性を探す」ことに大脳の大半は占められていた。このときはまだ。

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